なぜ中国人は自分勝手なのか?“結婚催促”に見る思考回路と文化の正体

中国エンタメで文化を読み解く

中国人と接していて、こんなふうに感じたことはありませんか?

「中国時ってなんでこんなに自己中心的なんだろう?」

「まるで世界が自分を中心に回ってると思ってるみたい…」

声が大きい、主張が強い、譲らない。議論をしていても、自分の正しさを疑わない。

こうした態度に、イラッとしたり、困惑した経験がある人は多いかもしれません。

しかし、本当に彼らは「自分勝手な人たち」なのでしょうか?

1今回は、その「自分中心に見える行動」の裏側にある文化的な価値観や考え方を、中国で毎年話題になる”結婚催促スパイラル”という現象を通して読み解いていきます。

中国人の「うるさい親」は文化か?構造か?

中国の春節(旧正月)2になると、多くの若者が帰省します。
そこで毎年、親や親戚から浴びるのが

「結婚はまだ?」

「そろそろ相手見つけないとダメよ」

という、おなじみの「結婚催促」トーク。

WeiboやBilibiliなど中国のSNSでも、「帰省中に親から何回『結婚』と言われたか」を数える投稿が毎年トレンドになります。

Redbook/小紅書(小红书)で「催婚3(結婚催促)」と検索した。ハッシュタグで「催婚」はレビューが18.3億回。「父母催婚(両親の結婚催促)」はレビューが8002万回に達している。(2025年6月22日時点)

しかも、それが終わったと思ったら、今度は出産の話になるのです。

「子どもはいつ産むの?」

「早く孫の顔が見たい」

もはや恒例行事。

(参考:若者の6割、「両親から結婚を迫られた経験あり」人民網日本語版 2014年12月05日17:45)
(参考:中国の「結婚しろ」プレッシャーは、どれほどのものなのか―中国メディア Record China 2016年2月12日(金) 15時30分)

文化というよりシステムに近いレベルで、毎年再生産されています。

原因①親世代の「子ども=自分」の発想

中国の親にとって、子どもは独立した個ではありません。

むしろ、自分の延長線上の存在です。

子どもの人生=親の人生
孫の誕生=親の社会的成功

これが感覚として根づいています。

中国の家庭密着バラエティ番組『做家务的男人(家事をする男たち)4』では、こんな親子のやりとりが放送されました。

父「おじいちゃん(父本人のこと)が孫を育てるのは一種の楽しみなんだ。おじいちゃんたちは今、あまりやることがない。ただ孫の将来の成長に見守りたいんだ。子どもは家族の希望であり、すべての希望が孫に託されている」
息子「なぜ人に希望を託すんだ?」
父 「それはどの世代にも当てはまることじゃないか。子供は国の未来なんだから」
母 「子供を持つのは楽しいことなのよ。人生を通して…」
父「子供は家族の希望なんだ」
母 「社会は新しい世代を必要としているから」
息子 「でも、あなたたちが子供を欲しいからって、オレは子供を作れないよ」
母 『私たちが欲しいからじゃないの』
息子「例えば、交際してから結婚を決めて、子供ができたら産むんだよ。でも、あなたたち2人が子供が欲しいからって、子供は作れない」
母「それは冗談じゃない」
息子「(両親の話に対して)あなたたちの話はこういう理屈なんだ。例えば、いま子供が欲しいと言って、私に子供がいないのなら親不孝ってこと」
母「そうじゃなくて。ちょっと結婚を急がせているだけなの」
息子「なるようになるから。あなたたちが急かすと、俺も余計に焦ってくるから」

(做家务的男人第一季EP6 25:00~「結婚を急かす両親VS子の議論」)

これは珍しいケースではなく、むしろ中国では日常です。多くの若者が、同じような構図で苦しんでいます。

比較軸中国日本
家族の捉え方社会の最小単位5/親子の境界が曖昧個人単位が基本/親離れが重視される
子どもの位置づけ親の人生の延長独立した存在
結婚に対する期待義務・面子・継承自由・幸せの選択
親の介入度高い(子どもの結婚相手に条件を出す)低い(基本は本人の自由)

原因②面子文化と「社会的に勝った」アピール

なぜ親たちはここまで干渉し、「結婚しろ」と叫ぶのでしょうか?

一つには、「面子(メンツ)6」という概念があります。

中国では、自分の子どもが立派な仕事をしていたり、結婚していたりすると、それを周囲に報告することがステータスになります。

親が他人に誇れる成功、それが結婚です。

私自身の体験でも、こぢんまりと式を挙げたいと思っていたのに、義母が「近所中に知らせておかないと!」と全力で拡散。まるで世界中の人が知りたがっているから教えてあげないとかわいそうとでも言っているかのようでした。

「別に大げさにしなくてもいいのに…」という私の気持ちは、まったく通じませんでした。

原因③スパイラル構造「やられたからやる」心理

ここでひとつ重要な問いがあります。

「親に言われて嫌だったなら、自分は次世代には言わない!」

普通はそう思います。

しかし、現実は、逆です。

多くの中国人は、自分が親に結婚をせかされて嫌だった経験があるのに、いざ親になると同じことを自分の子供にするのです。

これは、まるで日本の体育会系部活にも似ています。

自分が1年の頃にパシリにされた

嫌だったはずなのに

後輩に同じことをしてしまう

「苦労してこそ一人前」

「私たちもされてきたから

あなたたちもされて当然よ」

そういう価値観が無意識に働いているのです。

本当に文化のせいだけか?

ここで少し立ち止まって考えてみましょう。本当にこの「結婚促進スパイラル」は、文化だけが原因なのでしょうか?

実は、中国の急速な都市化と経済格差も大きく関わっています。

(参考:中国で少子高齢化が進む | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 ジェトロ 2022年6月29日)
(参考:少子化進む人口大国・中国 合計特殊出生率は日本以下に・・・ 東洋経済オンライン 黄 文葦 : ジャーナリスト 2025/05/10 6:00)

親世代は「結婚こそが安定への道」だった。しかし、今の若者にとっては、「結婚=コスト・義務・制約」であり、自由を奪うものにもなりうる。

(参考:結婚登録数が45年で最低水準、その背景は―中国メディア exciteニュース 2025年02月11日(火)14:40)

その価値観のズレを、親が理解しないままプレッシャーをかけ続けるから、衝突が起こるのです。

他国ではどうなのか?

似たような現象は、実は韓国やインドなど家族志向の強い国でも見られます。特に韓国では、「親の介入が強すぎて離婚した」というカップルもいるほど。

また、インドでは親が決めたお見合い結婚がいまだ主流で、「恋愛=自己中心的な選択」とされることも。

こう考えると、「親がうるさい」のは中国固有というより、家族が人生を左右するという価値観が色濃く残る地域に共通の問題と言えるかもしれません。

文化の裏側にある“愛”と“焦り”を見つめてみる

結局のところ、親がうるさいのは「心配」だからです。

ただしその心配は、子どものためというより、子どもを通して自分を安心させたいという感情の裏返しでもあります。

・都合が悪いから心配し
・都合が良いから自慢する

この構造を理解すると、中国人のうるさい親にも少し違った目線を持てるかもしれません。

結論

中国人が「自分勝手」に見える理由

それは、単なる性格や気質ではなく、文化・構造・価値観の反映です。

子どもは親の人生の一部であり、家庭は社会の単位。そこに個人の自由よりも、家族の面子や血の継承が優先される文化がある。

だからこそ、親の希望はあくまで善意でも、結果的には他者の境界を侵すことになります。

日本人にとって、それは「自分勝手に映る。しかしその背後には、論理や合理性では説明しきれない愛と不安の構造が潜んでいるのです。

中国人と接するとき、「また自己中か」と反射的に捉える前に、一度その背後にある文化のレイヤーを想像してみてください。

きっと見える世界が、少し変わってくるはずです。

注釈

  1. 親のやり方が、子にそのまま引き継がれて、繰り返されることです。ここでは、結婚促進が次世代に引き継がれてしまうことを指す。 ↩︎
  2. 中国でいう年末年始のようなもので、親戚が集まる大型連休。 ↩︎
  3. 親が子どもに「結婚しなさい」とせかすこと。中国では毎年のように話題になる。 ↩︎
  4. 中国の家庭密着リアリティ番組。2018年に放送が開始された。目的は男性に家事を促進させること。 ↩︎
  5. 家族こそ社会の一番小さな集まりと考えられているという意味。 ↩︎
  6. 周りからよく見られたいという気持ちのこと。体裁や見栄を大事にする考え方。 ↩︎

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