
「え、ゴミ処理にお金かかるの?」
「2000円なんて絶対払わない!」
中国人観光客の怒りと日本の「常識」がぶつかった瞬間でした。
壊れたスーツケースをホテルに捨てさせた中国人観光客が、処分費用2000円の支払いを拒否。この騒動がSNSで拡散され大炎上。日本中にモヤモヤと怒りが広がっています。
「また中国人か…」
「非常識にもほどがある」
そんな声が飛び交う中で、私たちは本当に「怒るだけ」でいいのでしょうか?
この記事では、トラブルの一部始終と日中の常識のズレを整理します。そして、同じような場面で冷静に対応するための実践的な方法もご紹介します。
「スーツケース騒動」の全貌
事の発端は、ある中国人女性観光客による行動でした。
1.日本のホテルで壊れたスーツケースを「処分してほしい」と依頼
2.ホテル側は「粗大ゴミ1扱いなので2000円かかる」と説明
3.女性は「どこにそのルールが書いてあるのか」と強く抗議
4.最終的にホテルが折れて無料で処理
5.女性はこの出来事を動画付きで中国SNSに投稿し、自らの正当性を主張
今朝チェックアウトに行ったんですが、日本の変なルール、本当に多すぎると思いました。私のスーツケースのキャスターが壊れていたので、新しいスーツケースをすでに買っていて、古い方は捨てようと思ったんです。それでフロントに「このスーツケース、処分していただけますか?」って聞いたら、「2000円かかります」と言われました。
私は「ゴミの処理って、ホテルのサービスじゃないんですか?なんでお金取るんですか?」って聞いたら、「日本ではゴミ処理の費用が高いんです」とのこと。「じゃあその規定ってどこに書いてありますか?明記されているなら私は払いますよ」と言ったんですけど、探しても全然見つからなくて、最終的に「これは当ホテル独自のルールです。明文化された規定はありません」と言われました。
私は「中国では、どんな料金でも具体的なルールや条項があって、明記されてないまま口頭で強制的にお金を取るなんてことをしたら、消費者保護の電話に苦情を入れられますよ」と言いました。「そんなのは横暴なルールであって、勝手な請求はダメです。もしルールがあるなら、500元だって払いますよ。でも条項もない、ただ口頭で『お金払って』って言われても納得できません」
そしたらスタッフの人がしぶしぶ「じゃあ無料で処理させていただきます」と言ってきたので、「それならお願いします」と答えました。彼は明らかに不機嫌そうにスーツケースを持っていきました。
戻ってきたときに私は翻訳アプリで「ご迷惑をおかけしました。本当にありがとうございます」と見せました。そして「もし明確なルールがあれば、当然支払うつもりでした。でも規定が見当たらなかったので、今回は本当に申し訳ないけれど支払えません」と伝えました。
すると彼は私に微笑んで、少し機嫌もよくなったようでした。私は、自分のしたことは間違ってなかったと思います。
今朝のこの件にしても、皆さんならどうしますか?たぶん「面倒ごとは避けよう」と思って、お金を払っちゃう人も多いんじゃないでしょうか。周りに白い目で見られても気にせず。でも私は性格的に無理なんです。納得できないことには、黙っていられない。
一部の中国人たちも、たとえ海外にいても理不尽なことがあればちゃんと主張しますよね?
だって、ゴミ処理代が高いなら、その分ちゃんと明記しておくべきでしょう?明記されていないなら、適当に言ってるようにしか思えないし、「今日は2000円」「明日は5000円」って言われても、誰が納得しますか?結局、人を見て金額決めてるんじゃないの?って思ってしまいますよね。
※上記動画女性の言葉を全文翻訳(一部省略)。
こうして、主張すれば日本のホテルも折れるという前例が、中国のネット上で広まってしまったのです。
下記は女性の言葉に対する中国人視聴者のコメントを一部抜粋。
・なんでそんなサービスをせなあかんの?(为什么要帮你?)
・ごちゃごちゃごねてるな〜(胡搅蛮缠)
・そのサービスは普通じゃないけど、大きなスーツケースだし(我觉得这不应该啊,那么大的行李箱)
・でもそこは中国じゃないじゃん(但是你不在中国)
・自分が日本の規定を理解していないだけじゃん(自己不了解日本的规定)
・むちゃくちゃなこと言ってるやん(是你自己不讲理了)
・二度と中国人に恥をかかせるな(能不能不要再给中国人抹黑了)
・無礼でしょ(你真的很无礼)
このコメントを見る限り、クレームをつけた中国人の女性は同じ国の視聴者からも批判されていました。同じ中国人から見ても、彼女に対する反応は日本人のそれと近かったようです。
中国人の行動原理にある3つの文化的前提
①ルールより「合理性」が重視される
中国では『損をしないこと』が何よりも重視されます。
ルールは書いてあってはじめて有効という考え方が強く、書かれていない支払いに対しては納得しない人が多いのです。
中国「消費者権益保護法実施条例」によると、
“価格明示”原則
- 「明码标价」とは、商品やサービスの販売時に、価格を明確に表示しなければならないという原則です。
- 消費者権益保護法や関連する行政規則で、事業者は商品・サービスの価格を分かりやすく明示する義務があるとされています。
- 価格を明示しない、または虚偽表示を行った場合は、行政処分や罰金の対象となります。
- この原則は、消費者の知る権利と公平な取引環境の確保を目的としています。
②「言わないと損する」という価値観
「主張する=損しないための正当な手段」
これは中国社会で生きるうえで身につく感覚です。
静かに我慢する日本式の美徳とは、そもそも発想が異なります。
③「お金の話=恥ずかしい」は日本流
日本では「お金の話をするのはみっともない」とされがちですが、
中国では「支払いルールを確認するのは当然」。
むしろ話さない方が損、とすら思われます。
【図解】日本人と中国人の“常識”のズレ(対比表)
項目 | 日本人の感覚 | 中国人の感覚 |
---|---|---|
ゴミ処分 | 有料処分が当然 | 無料サービスだと思う人も多い |
主張の仕方 | 我慢が美徳 | 声を上げて当然 |
ルールの扱い | 雰囲気を読む/暗黙了解 | 書いてなければ守る必要なし |
お金の話 | 恥ずかしい・避けたい | 損を避けるために確認すべき |
感情の出し方 | 抑える・隠す | 出すほうが誠実・普通 |
📌 この表の通り、「常識」の前提が違うと行動も全く変わります。
このトラブル、どう対応すべき?3ステップで冷静に対処しよう
ステップ①「違うルールだ」とはっきり伝える
相手の主張を聞いた上で、こう言いましょう。
「それは中国国内のルールです。ここは日本ですので、日本のルールに従ってください。この処分は2000円の有料対応と決まっています。」
「違いを理解して共存」ではなく、違いを説明して線引きすることが大切です。
ステップ②毅然と2冷静に伝える
怒鳴る必要はありません。しかし、相手が強気でも怯えず、一定の距離を保ってこう言い切るのが有効です。
- 「これは無料ではできません」
- 「ルールは明記してあります。日本ではこうなっています」
- 「ご理解いただけない場合、お受けできません」
スーツケースは東京23区では通常「粗大ごみ」として出し、処理手数料は400円が標準的です。
ステップ③おかしな前例を作らない3
「今回だけ特別に」とサービスしてしまうと
✔ それが他の観光客にも広まり
✔ 同じ要求が繰り返され
✔ 自分たちの仕事が増えるどころかマイナス利益になる
最悪の場合、ホテル側が勇気を振り絞って、こんな展開も起こさなければならなくなります。
「あなたのような中国人が、次に予約してくれている中国人観光客に迷惑をかけるかもしれません。他のお客様から『またトラブルか』と思われ、中国人全体への印象が下がります。最悪の場合、当該ホテルは「中国人お断り」をしなければならなくなるかもしれません。」
毅然と線引きをすることが、他の善良な中国人観光客を守ることにもつながります。
具体的な事例
- 民泊施設が一時的に受け入れ停止
- 2024年11月、日本の民宿(ゲストハウス)で中国人観光客5人が宿泊した際、大量のごみを部屋に放置したままチェックアウト。
- テーブルや洗面台、床などに食べ残しや使い捨て容器、ペットボトル、使用済み衛生用品などが散乱し、備品の食器も使いっぱなしの状態だった。
- この出来事はSNSで拡散され、宿泊施設側は清掃のため一時的に予約受付を停止せざるを得なかった。
- 大阪の宿泊施設でも同様の被害
- 食べ残しやごみの放置が相次ぎ、複数の旅行予約サイトで一時的に予約が停止されるなど、営業上の損害が発生した。
「非常識」と切り捨てる前に“違い”に気づく余裕を
このトラブルを通じて見えてきたのは、私たちの「あたりまえ」が、必ずしも他国では通じないという現実です。
だからといって、文化の違いを理由にあきらめる必要はありません。
違いを理解した上で、「ここは日本であり、こういうルールです」と冷静に・明確に伝える力が必要です。
それが、次のトラブルを防ぎ、怒らずに対応できる自分を育てることにもつながります。
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